『虫の知らせ』/akiyan

…七年前の冬に七つ離れた弟が亡くなった時の話です。弟は中学、高校時代は明るくて友達も多い方でした。社会人になってからも楽しそうに働いていますたが、数年後にうつ病にかかって自ら命を断ってしまいました。

…その年は寒い冬でした。安代に住む祖母は弟が亡くなった夜、夢に横たわる若い男が出てきて「おばあちゃん僕の足こんなに冷たくなったんだよ触ってみて。」と言われて不思議に思いながらもさすってあげたそうです。
…私の実家のある滝沢の母は寝ている時に亡くなった義父(弟からみて祖父)の声で「何やってるじゃT(弟の名前)が死んだぞ。」と言っているのを聞いて慌てて飛び起きました。ところが何の事か分からず、お湯を沸かしお茶を飲んで考え込んでしまいました。母はこの時、まさか弟が小屋で死んでいるとは夢にも思わなかったそうです。

…私はその頃東京に住んでいました。夜中にぱっと目が覚めて時計を見ると午前二時半でした。後から聞いて知ったのですが、これは弟が亡くなった時刻でした。実は前日まで主人の実家の前沢に帰っていましたが、幼い子供達も風邪気味で主人に実家に帰りたいといいそびれ、そのまま東京に帰ってきてしまっていたのです。大宮駅で新幹線を降りて埼京線に乗り換えしようと歩いていると、壁に貼られた小岩井雪祭りのポスターがぱっと目に入ったとたん、何故か(実家に帰らないと…)とい気持ちになってしまいました。でも明日から旦那は仕事だし、今から引き返すのは無理だとあきらめたのです。

…今思うと私のこの予感や祖母の夢、母が聞いた亡き祖父の声は虫の知らせだったのかもしれません。あの時帰ってあげていたら弟は今でも元気でいてくれたのでは…と悔やんでなりません。