2010-01-01から1年間の記事一覧

第1回「みちのく怪談コンテスト」総評

平成22(2010)年11月18日金曜日午後6時から、岩手県盛岡市の県公会堂において、第1回〈みちのく怪談コンテスト〉の選考会が行なわれました。作家・高橋克彦さん、〈東北学〉で知られる東北芸術工科大学東北文化研究センター所長の赤坂憲雄さん…

お詫びと訂正

先日発表いたしました「第一回みちのく怪談コンテスト」入賞作品におきまして、青木美土里さまの『残響』が佳作に選ばれていたにも関わらず、主催者側の手違いで、掲載された受賞作一覧より漏れておりました。 青木さまの『残響』は佳作に入選しております。…

審査員別ベスト20

今回の選考では、投稿作品の中から、審査員のお三方にそれぞれベスト20を選んでいただき、それらをもとに協議を重ねた結果、受賞作が決定されました。ここに、審査員によるベスト20を紹介いたします。 (作品の並び順は、アップロード順となります) 赤…

賞品の発表

さて、厳正なる審査の結果、第一回「みちのく怪談コンテスト」受賞作が決定いたしました。それでは、賞品を発表いたします。 大賞 附馬牛人形「黒蛇大明神」 附馬牛人形とは、遠野郷に古くから伝わる民芸品で、お祝いの品として人気があります。http://www.b…

受賞作発表

第1回「みちのく怪談コンテスト」 以下のように各賞が決定いたしました。 大 賞:『岩手の花』/佐原淘 優秀賞: 『あわいの町』/庵堂ちふう 優秀賞: 『口寄せ』/千湖 優秀賞: 『隠し子』/さとうゆう佳作:『お椀』/高家あさひ 佳作:『おもちゃ』/…

イベント開催のお知らせ

……と、いう訳で明日は、いや日付が変わったのでもう今日ですね。 仙台金港堂本店において午後3時より、トークイベント『東雅夫・みちのく怪談を語る』が開催されます。20日の発表を前に、東さんが口を滑らせる……かも!? ゲストは「玉工乙女」の勝山海百合…

第2回みちのく怪談コンテスト、開催決定!!!

本日の選考会において、審査員三氏および荒蝦夷+東北怪談同盟での協議の結果、来年度の「みちのく怪談コンテスト」開催が決定いたしました!!!!後日、改めて詳細は発表させていただきます!

第1回みちのく怪談コンテスト選考会、無事に終了!!!!!!

しばらくぶりの更新です!去る11月18日(木)、岩手県盛岡市某所にて、第1回みちのく怪談コンテスト選考会がおこなわれました。審査員は、盛岡市在住の直木賞作家、高橋克彦氏、「東北学」の赤坂憲雄氏、アンソロジスト・『幽』編集長の東雅夫氏。厳正なる…

「みちのく怪談コンテスト」宣言

新たなる〈みちのく〉像への期待 高橋克彦 『遠野物語』を通じて、さまざまなイメージが、岩手の地に、東北の地に、そして〈みちのく〉に寄せられてきた。風土の持つ幻想性に、多くの人たちが魅了された。〈みちのく〉に暮らす者たちにとってはどこにでもあ…

締切のお知らせ

おかげさまをもちまして、「みちのく怪談コンテスト」は無事に投稿を締め切りました。これもひとえに投稿くださった皆さまのおかげです。本当にありがとうございました! ただいま、投稿いただいた全作品のアップロードが完了いたしました。万一、投稿した作…

『広瀬橋、真夏の冷気』/康

私は五十歳、大阪生まれ。今春、転勤で来た。仙台も今年は暑いとか。 二十日程前、私は広瀬橋を歩いていた。広瀬川をまたいで河原町と長町を繋ぐ橋だ。かつて数度に亘る大飢饉では、多くの人々が食物を求めて橋近くに集まり、藩が給した粥も甲斐なく、力尽き…

『広瀬川畔、たたずむ少女』/康

僕は今春、大阪から転勤で仙台へ来た。先日、霊屋橋辺りの川原を散歩していると、女の子がたたずんでいた。小学校前の年頃だろうか。やせて小さい。格好が懐かしい。元はピンクと思しき薄汚れたブラウス、スカートは赤と茶のチェックで膝下までぞろり。ズッ…

『カミサマ』/内村夏海

僕とカミサマの初めての出会いは、僕が歩き始めた頃のようだ。おばあちゃんいわく、いつの間にか外に出た僕が転んで庭石に頭をぶつけそうになった時、たまたま休憩していたカミサマにぶつかって事なきを得たそうだ。この団子をカミサマの前に持ってってお礼…

『土還る、水を得る』/こまつまつこ

私の地元にはダム湖があって、そこには小さな村とアーチ橋が沈んでいる。橋はいつもは湖の中だが、夏になって水位が下がると、湖からその姿を現すのだ。 学生時代に授業で、橋をレポートする事になった。私が橋の写真を撮っていると「こっちゃこーい」という…

『美しいもの』/桜井涼

美神様がいらっしゃる。お前を迎えにいらっしゃる。 そう、四肢をおさえる小鬼は口を揃えた。行灯は消え、月明かりと夜風が差し込む座敷の萎びた布団でわたしは大の字になっていた。真っ直ぐ伸びた四肢の首には小鬼が一匹ずつ、小さな手でわたしを布団にはり…

『光環神社』/日野光里

とてもよく願いを叶えてくれる神社があるというので、私はひとり旅立った。 着いた神社の境内は、とても陰鬱で、人の陰が見えない。 そう言えば、ここを教えてくれた人は、お願いごとをする姿を人に見られたくないことが多いと言っていた。 なぜなら、真っ当…

『祓いの作法』/日野光里

その人は憑かれやすいと言っていた。 「はあ、それはお困りですね」 と言うと、「ええ、ええ」と何度も首を縦に振る。 「では、いつもお祓いを」 「そうなんです。懇意にしているお寺さんがありまして」 「それは、よかった」 私は話を合わせながら、頷いた…

『骨石』/小島モハ

尺骨のかたちをした石をここで見つけてもう十年になります。化石ではありません。もちろん骨ではない。骨のかたちをした、自然の石なのです。 それからこのかた、時間をみつけてはここに通い、ひたすら石を拾いました。幾本もの肋骨、ころころした指骨の諸々…

『新たな民話』/一双

「三太郎。おめぇ、去年の夏によ。村に泊まった学者様を覚えちょっか?」 「村長じきじきお迎えしたお方のことか。確かヤナ、ヤナ……」 「柳田様じゃ。柳田国男様。七日ほどしかおらんかったが、家や畑の話を熱心に聞き集めちょったじゃろ」 「そうじゃそうじ…

『籠の中』/こまつまつこ

子供の頃、よく友達のS君と、林で木の実を拾って遊んだ。いつだったか、赤黒くて珍しい形の木の実を見つけたことがあった。それはぽつぽつと林の奥に続いて落ちていた。あんまり珍しいので、S君に自慢しようと思って、落ちている木の実を拾い集めた。 木の…

『夜道』/とんぼ

バタピーサンドの夕飯を食べながら、テレビをみていた。その番組で、ここが東北地方だと知った。タレントが、自慢げに、わたしが聞いたこともない、お国言葉を披露している。 山に囲まれて、自然が身近とのことだが、石油エネルギーを消費して、排気ガスで空…

『箸』/剣先あおり

主人には不思議なところがありました。時々ふといなくなったかと思うと数日経てば戻ってくるといったことを何度か繰り返していたのですが、それは決まって事業がうまくいかなくなっていたときでした。始めは女が出来たのかと思っていましたが、そんな余裕も…

『或る別の話』/ルリコ

父は、妹が迎えに来たと、病室の窓にかかる雪に言った。大阪では珍しい四月の雪に、故郷の秋田を思い出したのか。父の生家は秋田市内で畳屋を営んでいた。祖父で三代目の老舗で、職人、弟子が併せて二十人の大所帯だった。三つ下の妹は男三人の後に生まれた…

『早池峰神社』/ハルカ

もう20年近く前になる。 人気のない、民家もまばらな淋しい山道を、だいぶ走ってやっとたどり着いた早池峰神社。 長い石の階段が記憶の中にある。肝心の神殿が何処にどういうふうに建っていたのかは思い出すことができない。とにかく、石段を登り切ると平…

『森を通る』/遠目

森を通ってきたんだ――と友人は言った。 次のバスまで優に一時間はある。地図の上では、君と約束した場所は眼前の森を横切れば至近だ。なに、難儀を厭わなければ――この予感を厭わなければ、と踏み入ったのだ。 薄暗い。蔓や草を絡めた樹々は鬱々とした塊と化…

『青根のホテル』/豆傘馬

これは大学の友人Sから聞いた話です。Sはテニスサークルに所属していました。毎年夏休みになると合宿に行のが恒例で、今年もサークルの仲間十数人で宮城と山形の県境にある青根という場所へ行き、そこのとあるホテルを宿をとったそうです。4泊5日の日程…

『百足』/豆傘馬

宮城県石巻市から船で一時間程の場所にある田代島。 今から40年前にその島に住んでいた友人から聞いた話です。友人が幼い頃、近所のおじいさんの家に行った時の事。 「百足にはよ。その名の通り百本脚があんのか気になってな。ワシは数えたよ。頭を細長い…

『お婆ちゃんの思い出』/宇津呂鹿太郎

私はお婆ちゃんが大好きでした。共働きの両親に代わって学校から帰った私の面倒を見てくれていたのはお婆ちゃんでした。 私は偏頭痛持ちでした。痛むのは大抵決まって夕方で、そんな日は家に帰るとすぐにお婆ちゃんに布団を敷いてもらい、横になるのでした。…

『会津』/戸神重明

三十年前、千葉県出身のN子は中学の修学旅行で会津若松へ行った。夜は同じクラスの仲間五、六人とホテルの一室に泊まったが、彼女だけがなかなか眠れずにいたという。 真夜中を過ぎた頃、チリーン……と、外から鈴の音が聞こえてきた。少ししてまた、チリーン…

『宮城ナンバー』/鰯率

二日前くらいから止まっているのだという。 宮城ナンバーの四ドアの茶色い車。免許は持っていないし、それ程車に興味がある訳でも無いので車種は解らない。ただ最近の車で無いことは確かだ。角張った車体は長時間太陽のやんわりとした光を受け熱を帯びていた…