『社童子』/花房 肇

「社童子(やしろわらし)」って知ってる?
知らないって?
TVの「座敷わらしの出る宿」の放送をぼんやり見ていた俺の息子が食いついてきた。

子供のころ近所の神社の境内で俺を含めて4人でかくれんぼをしていたんだ。
そこは裏山の一本道の頂上にある神社で大きな赤松の木々に囲まれ昼でも薄暗くて天狗でも出そうな雰囲気の場所さ。
隠れる場所と言っても神社の裏か、物置小屋の裏か、松の木の根元ぐらいしかない。
そうしているうちに俺が鬼になった。
ところがいくら探しても友達らが居ない。
「妖怪に食われちゃった!?」
そんな怖い話じゃないさ。
そいつらはイタズラで俺を一人残して山を下り始めていたんだ。
山道の下のほうで3人がゲラゲラ笑いながら手を振っていた。くそっ!と後を追おうとしたその途端

ドサッ!…と後ろで音がした。

振り返ると俺より小さな男の子が「着地」の態勢でそこにいたんだ。
驚いた俺は「ぅわあっ!?」と走りだし、境内を抜けるあたりで振り返った。

その子の姿はもう無かった。

3人と合流してその事を話したがもちろん、俺ら以外誰も見なかったと言う。不思議だろ?だから妖怪だと思うようにしたんだ。

「ふぅん…」
息子は少しがっかりしたような表情でまたTVに向き直った。

いつか孫が出来たら、また話してやろう。