『夜道』/とんぼ

 バタピーサンドの夕飯を食べながら、テレビをみていた。その番組で、ここが東北地方だと知った。タレントが、自慢げに、わたしが聞いたこともない、お国言葉を披露している。
 山に囲まれて、自然が身近とのことだが、石油エネルギーを消費して、排気ガスで空気を汚染して、山に近づかなければならない。
 高いところで寝転がり、星空をみるのに、いい季節とのことだ。天の川が満喫できるらしいが、ここからは、星が、ポツンと二つ、三つ見えるばかりだ。
 本当に山にいけば、心が洗われるのだろうか。
 ズックをはいて、外へでた。もあんとした空気に包まれる。ビルの高いところが、光っていた。ズックの底が、アスファルトに擦れる。電柱と自販機を数えた。星が一つ、見張りのようについてくる。
 山の姿が、いっこうに近づかない。
 その場で足踏みしているだけだった。