畦ノ 陽『街角インタビュー』

「はい? 遠野の怖い話ですか? 私、そんな体験なんてないですよぉ。普通ですって。ほら、私、なまってないでしょ? 東京の人ってすぐ変な目で見るんですよね。え? お爺ちゃんも遠野? あんらやだ。そうなんだぁ。う〜ん。怖い事って言ってもなぁ。
 そうだ。不思議な事ならあるかな。
 私んちって裏は山なんだけど、一年前からかなぁ。夜になると山からドンッ、ドンッて何か落とす音がするんですよ。それにそのあとだけど、道路がゴンロ、ゴンロって響くの。不思議でしょ?
 そうしたらね。いつの間にか近所の空き地に大きな石がいっぱい転がってて、誰かのイタズラなのかなぁ。石にお地蔵さんのようなものが彫られてたんだって。暇だよねぇ。もう三百個以上も溜まったって言ってたかな。
 ところでお爺ちゃんってさ。どこの局の人? やっぱり地元ケーブル? うーん。聞いた事ないなぁ。
 そうそう、それがね。小学生が喜んじゃって、空き地に集まってんの。寒いのに元気だよねー。え? そりゃ昔はそうだろうけど、今はゲームがあるし、塾行ってる子も多いよ。うーん。どうなのかなぁ。うるさいオバサンとか注意しそうだけど、何も言わないんだよね。そばに貯水池があるのにさぁ。流行ってるのは、かくれんぼっぽいね。
 多分新ルールじゃないかな。普通、見付けたら、み〜つけたっていうじゃない?でも、見つけた時も見つかった時も『らかんか!』って言うの。変でしょ? あちこち石の隙間から顔出してさ『らかんか!』って叫んで、すっごい楽しそう。いいよね。子供って。
 え? 功は奏したかって……、ちょっと意味分かんないけど、何も悪い事ないからいいんじゃない? 人に迷惑掛けちゃ駄目だけど――。ああ、はい。いえいえこちらこそ。じゃあ、お爺ちゃんもお婆ちゃんも頑張って下さいね〜」