瑪瑙『殺生石、貧しき者を苛む神をも殺す』

 むかし、ある所に貧しい村があった。夏になると神社では富くじをやっていて、村の者は夢中になってくじを引きに行ったという。

 その中に大層くじ運が悪い金助という若者がいたのだが、そいつは何度くじを引いてもてんで駄目だった。神様にくじ運を直してもらおうと、金助が村外れにある山の祠に直談判に行くと、神像の様子がいつもと違うことに気がついた。目はおかしなところについており、鼻は帯でもぶら下げたように長く、到底ご利益があるような姿形ではなかった。

 翌日、金助は山のてっぺんにあるという大きな石を抱えて祠にやってきた。

 金助は神像の前にでっかい石を置いて勝ち誇ったように言った。

「これで、村は安泰じゃ」

 そう言い終わるが早いか、神像は真っ二つに割れてしまった。金助もそれから何日かして熱に浮かされ死んでしまった。

 村の者は口々に金助が持ってきたのは近づいた獣を殺してしまう殺生石だと言い出し、石を元のところに返そうとしたが、石に触れたものはやはり熱に浮かされ死んでしまったので、村の者は祠に近づくことをやめてしまった。そうこうするうちに村の長者が一文無しになって姿を消した。すると、村はどうしたことか羽振りがよくなり栄え始めた。聞いた所によると、祠の薄気味悪い神像は長者が強引に寄贈した、物の怪を模ったものだったらしい。