一双『温度画像』

 中学最後の冬休みに僕はチャットサイトをロムっていた。
 話しているのはどちらも男で、九州と東北の人のようだった。僕がロムり出した時、彼らは雪の話をしていた。
「今年はまだ直に見てないなぁ」
「マジで? こっちは積もったのが溶ける前に次のが降るよ」
「白い?w」
「白いねぇwww」
「同じ日本で、同じ冬なのに、ホント違うよな」
「うんうん。そんなに離れているにもかかわらずこうして世間話ができる便利な時代w」
「しかも文章だけでなw」
「まったくwwwそれでも人柄って伝わるよねぇ。そこでユニークな九州君に、東北の俺が雪の代わりの冷たい話を進呈しよう」
「ナニナニ? ちょっと怖いんだけどw」
「んー、知ってて損はしないと思うけど、怖いの嫌なら止めとく?」
九州男児ナメんなよっw」
「オッケーwそれでは東北男児が語ります。一枚の画像の話。写っているのは雪原に少し埋まったピンクのニット帽」
「女物?」
「だろうね。その画像、触れると温度が違う。雪の部分は冷たくて、ニット帽の部分は温かい。そして、ニット帽の下はもっと冷たい」
「それって……」
「わからない。ただ、画像に触れるとパソコンでも携帯でも必ず壊れるらしい。文字通りのフリーズ(凍結)」
「何だそれwダジャレかよwww」
「wwwww」
「その画像。どこにありますか?」
 それまでロムっていた僕が書き込むと、二人は即座にチャットサイトからログアウトした。
 怪談好きが怖がりというは本当の話らしい。