2010-07-28から1日間の記事一覧

『大八駒』/新熊昇

慶応の末から明治のはじめ頃までのごく短いあいだ、天童の町で夜更け奇妙な物の怪たちの姿が酔漢に目撃された。それは、実際の対局に使われるくらいの将棋の駒が、『ひょこ回り』のように、銘の彫られた底面を地面に付けた王将を先頭に飛車、角、金、銀、桂…

『神にしか解けない知恵の輪』/烏羽玉タロウ

岩手県藤沢町在住のパズル作家花山環は完壁な知恵の輪を作りたいと思っていた。知恵の輪は解けなければ知恵の輪ではない。しかし花山が求めた物は人では解けない知恵の輪、もし解けるとしても神にしか解けない知恵の輪、人が聞けば冗談にしか受け取れないだ…

『白装束』/本間進

ざくっ、ざくっ。雪の降り積もった弘前公園を歩くと、自分の足音しか聞こえない。 高校生だった僕は、当時公園内にあった図書館からの帰り道、うつむきながら歩いていた。夕方だというのに、吹雪で薄暗い。本丸近くにある桜の大木や古井戸の跡も、すっかり雪…