『ともだち』/国東

黒い生き物のような死に物のようなものが出ると言います。川面から目の上だけを出してただぬらぬらと、赤い橋のある、上流を眺めていると言います。
噂を聞いて朝も昼も夜も何度も、寝床を学校を抜け出して会いに行くのですが、未だ目的は果たせていません。太陽を、懐中電灯を、星を反射して、川面はきらきらと輝くばかりです。
――きょうこちゃんに言ったの?
マヤちゃんの笑いを含んだ高い声が今もすぐ耳元で聞こえます。
――川で死んだ子供は河童になれるって言ったの、あんた? あんなに外で遊びたがってたのに可哀想。だから……。

きょうこちゃんは転校して来るなり3年ずっと、入院していました。絶えず溺れるような咳をして、堪忍ねという声はか細くて。
灰色の病室ではいつも窓を眺めていました。小さな頭を起こして小さな空を。呼ぶと、花のような笑顔で振り返りお話をせがむのです。本当のお話も、嘘のお話も大好きでした。もっともっとと言いました。
出席番号が近いからと前川先生がプリントを押し付けて来たのが最初です。
きょうこちゃんは子供っぽい部分もあるけれど、人を惹きつける何かも持っていました。修平くんも千春もゴウジくんも、あっという間にきょうこちゃんを好きになりました。おとなしい子をひどく嫌うマヤちゃんが積極的に通ったのは、意外でした。
私たちは放課後にもうひとつの教室を得たのです。
天にはたくさんの星が煌めいています。降るような星です。息が少し熱い。水色のパジャマを脱ぎ捨てて、きょうこちゃんは河童に、なったのかな。
川が見えて来ました。今日は会えるような気がします。会いたいです。