2010-08-18から1日間の記事一覧

『河童捕獲許可証』/花房 肇

遠野の観光協会では「河童捕獲許可証」なるものを発行してくれる。 観光客向けの一種の洒落の商品である。 その日、事務所に許可証が欲しいと訪ねてきた男は、観光客というより学者風であった。 愛想のいい受付の女性が対応し、男は差し出された許可証の申込…

お詫びと訂正

本日アップいたしましたヒサスエさまの作品名を、誤って『さっちゃん』と表記してしまいました。正しくは『よっちゃん』です。作者のヒサスエさま、および関係者の皆さまに大変ご迷惑をおかけいたしました。お詫びの上、訂正させていただきます。 http://d.h…

『よっちゃん』/ヒサスエ

父方は女系家族だ。父に姉が4人。姉達には女の子が2人ずつ、8人の従姉。私の年子の兄が唯一の男の子。穏やかな性格で、従姉が集まると一緒に遊んでいたが、物足りなくなるのか、途中から奥座敷で、1人プラモデルやパズルに興じていた。 『座敷わらすの相…

『鈴』/ヒサスエ

「魔除けだがら」 祖父は私のランドセルにピンポン球大の鈴を結びつけた。動くと、カラカラとも、シャリシャリとも聞こえる軽やかな音を奏でた。その音に誘われてか、時々、私の後ろについて来るモノがあった。姿は見えない、小動物の息づかいに似た気配。学…

『ともだち』/国東

黒い生き物のような死に物のようなものが出ると言います。川面から目の上だけを出してただぬらぬらと、赤い橋のある、上流を眺めていると言います。 噂を聞いて朝も昼も夜も何度も、寝床を学校を抜け出して会いに行くのですが、未だ目的は果たせていません。…

『メドヴェージの蒼い馬』/岩里藁人

モスクワの画商ポタポフは、一枚の油絵を前に腕組みをしていた。先日、曽祖父の遺品整理に訪れた青年から購入したものである。菜食主義者だという神経質そうなその青年は、これはシャガールの作だと主張し、一攫千金を夢見ていたようだった。しかし、ポタポ…