『猫又』/新崎

 猫は歳を取ると猫又になることがあるらしい。
 
 少し前に、私は田代島に行った。田代島とは宮城県石巻湾にある島の一つで、別名猫の島である。行ってみると本当に猫が多い。
 猫・猫・猫。犬も歩けば棒も当たるならぬ、人も歩けば猫に当たる。まあ、当たりはしないけど。ちなみに犬を入れてはいけないらしい。犬進入禁止区域。
 そこで、私は初めて猫の集会を見た。噂には聞いていたが、今まで見たことがなかったのだった。
 人通りの少ない(猫もほとんどいなかった)小道を抜けると、すぐ近くに空き地があった。そこには二十を超える猫がたむろしていた。三毛、白黒、虎柄など様々な種類がいた。三毛が一番多かった。そして、その会合の中心には、長老という感じの、とても尻尾の太い猫が毅然として猫達に囲まれる形で座っていた。小さな女の子の腕ほどもある尻尾。身体も太った三毛で、なんだかすごく貫禄があった。私もひれ伏しそうだった。
 猫達は私に気づくとすぐに散り散りになった。しっぽの太いあの猫も同じだった。身体の割に俊敏な動作で塀の向こうに消えた。
 きっと、あいつは猫又だったんじゃないだろうかと思う。あんなに尻尾が大きかったのだもの。猫又はしっぽが二つに分かれていると言う。二つには分かれていなかったけれど、あれは猫又なのだろうと勝手に思った。それにしても何の話をしていたのだろう。猫又の成り方とかだろうか。
 ちなみに、猫又になるには飼い主を殺さなければいけないという説もある。最近我が家の猫は朝六時くらいになると私の顔にその小さな手を乗っけてくる。よく鼻に乗っけられて、ふごふごして私は目を覚ます。もしかすると、これは窒息死させようとしているのだろうか。なんて。