『願掛け』/槐妖

岩手のある都市に蹈鞴で有名だった街がある。その昔男たちは鉄を得る為に必死で働いた。だが、結果病に倒れる者も多く居たと言われていた。その中で異質な病気に陥り亡くなった方々が居たらしい。そこで、悲しんだ家族が祠を建て祀ったという。其れは狭い路地に古民家が立ち並ぶなか。石畳を小高い丘に向かって歩くとあるのだが。其処は、地元では有名な恋愛が成就するとされていた。だが、それは一般の話し…密やかに囁かれる噂によると、此処で願掛けするとどんな願いも絶対叶うと言われていた。某知ってか知らずか何人かに一人は恋愛成就ではない願掛けを行う為に訪れていた。

今日も一人、真剣な面持ちをした高校生と思われる少女が祠の前に立ち尽くす。「お願い私は死にたくないの…彼女達から私を守って」悲痛な面持ちの少女が祠に願いを唱えると…辺りが暗くなり。背後で「くくくっ」と笑い声が聞こえた。振り向くと、其処には着物姿でから傘をかぶった10歳ぐらいの少年が佇んで居た。傘で表情までは読み取る事は出来なかったが笑いの主はこの人物である事だけは理解出来た。その少年は青白く光って居たのだ。

「わしの願いを叶えれば主の願いも叶えてやろう」そう言った少年はから傘を外す。少女を見据えた眼は一つ目。少女はヒィっと腰が引ける。だが、気持ちは変わらないのか「貴方の願い?」と応える。

「ああ、お主の一つ目貰い受ける。それでどうじゃ」

「解りました」少女の返答に一つ目の少年は頷き、少女の右目に手を据える。クチュっと湿った音と共に眼球が零れ落ちる。
暗闇の中悲痛な叫びが響き渡る。数日後少女は眼帯をして元気に高校へ登校する。そんな中、少女の同級生数名が精神を病み不登校になった。願い叶えり…主も眼掛けを試みては…