『捕獲!?』/槐妖

岩手県遠野市。その駅から北東に20分程車を走らせた所に観光地で有名なカッパ淵が妖しくも静かに時を刻み続けていた。土淵町の常堅寺裏に流れる小川は鬱蒼と茂った草木に覆われ、澄み切った水は木漏れ日を反射し心地良い音を奏でながら流れ落ちる。

伝説のカッパとはこんな大自然の中で生きていたのだろう。
小川のほとりには小さな祠があり、カッパの母子が鎮座していた。
その祠の前で静寂を掻き消すカップルの甲高い声が響いてきた。
「本当にこんな所に居るの」
「居るに決まってるって」
何の話しをしているかと思えば、赤ら顔で口の大きなカッパが居るかいないかと言い合いをしているようだ。
「そんな許可証まで買っちゃって」
「でもな、捕獲したら一千万だぜ」
どうやらこのカップルは、赤ら顔で口の大きな河童を捕獲する為。わざわざ観光協会でカッパ捕獲許可証を購入しこの有名な観光地でカッパ捜索をしているようだ。

「でも、何で私達が赤カッパを捕まえなきゃならないの…もし、居たとしてもどうするつもり?」
「だって気になるだろ。居たとしたら…」


「まあね。でも、わざわざ北上から来た私達純血種族の緑カッパには何の懸賞金も掛かってないのにさ…異種カッパが人気で懸賞金って、どうなのかしら」

東北の陸奥には、多くのカッパの種族が存在するらしい。