『人蜉蝣』/不狼児

 薄葉の色の唐衣。
 とびでた、異様に細長い手足。
 俯いた顔。ざんばらの髪。
 谷の木陰に朧に立つと見える人の姿は瀬音に揺らぎ、それまでも時折、木の間隠れに姿を消すように見えたが、ようやく同じ台地に立ったかと思うと、忽ち消える。
 消えた人影の足元には幼子の骸。
 どうやら崖から落ちて、石で頭を打ったのだ。
 こときれて、一両日。
 あれがじっと傍らに立って見守っていたのだろう。山犬や鴉、鼬の類が喰い荒らさぬようにさ。