『社説抜粋』/金魚屋

 島根国立イタコ会館でのオープン祭は、初日の入場者がかるく3000人を超え、一ヶ月経った今日でも週末には長蛇の列ができている。「各都道府県にイタコ会館建設」をスローガンで発した『イタコ金』であるが、当初、野党の反対で危ぶまれていたものの、幸先の良いスタートをきった。
 テレビに出たかわいい『イタコ』が人気になり、青森の観光業も右上がりで回復。東京に『イタコ』達が店舗をもちはじめると、口コミ、ネットで評判になった。
 訪れる客の話をよく聞いて、あたりまえの助言を故人から与える。故人をおろさず愚痴だけこぼし、帰る客もいるそうだ。心の疲労が『イタコ』の癒しという供給で相殺されるかたちとなり、リピーターも続出したが、なかには暴利をむさぼる悪徳『イタコ』もいたらしい。
 今では値段も定められ、低価格が評判を呼び大賑わい。海外からの依頼者も珍しくない。一過性のブームではなく、文化の一環として『イタコ』は定着したのである。
 しかし、非健常者の職業であったはずの『イタコ』が、地方公務員のあつかいになったとたん応募者が殺到。国家試験の倍率も上がり、今や東大出の『イタコ』も珍しくなくなった。慢性不況のなかリストラ者救済で始まった国家事業であるが、エリートの就職の間口を広げただけとの反論もある。
 なお『イタコ』という名称にかんしては、沖縄知事から反対の意見がでており、仮、ということになった。