不狼児『今日の出来事、及び続編。ニュースより』

 大洪水の後。河童の溺死体が山のてっぺんで干からびている。

 ナメクジ医者「塩分は控えめにね。塩分は体に毒です。ならば摂らない方がいい(おまえを食って溶けたくねえ)」

 永遠の夏が棲むプール。水は濃い緑色に濁っている。空を映す水面はいつも平らで、さざなみ一つ立たない。試しに十円玉を放り込んでみると沈まずにいる。しばらくして見えなくなったと思うと、人の気づかないうちにプールサイドに捨ててある。コンクリートが真新しいのは、完成してから一度として水を替えていないこのプールに入った者が誰もいないからだ。雨が降ろうが、天地がひっくり返ろうが、どんなことをしても、プールの水が入れ替わることはない。

 木陰では鳥が啼いている。クチトガラス。カッコウの仲間。自分で卵は孵さない。異名は声だけの鳥。いつまでも啼き続けて、フッコウフッコウとうるさい。

 お山で猿を殺してはいけないよ、と話すおじいさんの喉笛に、果物ナイフを突き立てた。一気に掻き切る。真っ赤な血反吐を撒き散らし、青畳にもんどり打って、ゴボゴボと内臓を吐きだすと、断末魔の痙攣が止まった。おじいさんは畳の上では死ななかった。死体はおじいさんを殺して人になりすました大猿だった。畜生は臭いですぐにわかる。大好きだったおじいさんはもういない。

 後に彼は科学者になって、ニホンザル白痴化ウィルスを開発した。猿の群れが掠奪する農作物に混入して数年。ニホンザルはすっかり白痴化して山の中に原子力発電所を建てた。原子炉は暴走し、メルトダウンする。ニホンザルは絶滅した。