松 音戸子『火振りかまくら』

 二月、じいちゃんと角館の火振りかまくらを見にいった。縄を結び付けた稲わらの固まりに火をつけて、ハンマー投げみたいにぐるぐる回す、厄を払うためのお祭り。
 夜、火の粉を散らしながら回る様子は危なっかしいけれど、炎のドーナッツみたいな円は雪に映えてとっても綺麗なんだ。
 誰でも参加できるみたいなので、もうちょっと大きくなったらやってみたいと思った。
 祭りを見終わって帰る途中、小さな川の向こう岸で火振りをしている男の人がいた。勢いがすごい。
 「じいちゃん、見てよ」と言ったら、「あれは違う」と言われた。
 じいちゃんは、強張った表情で優しく話してくれた。
「生きている人よりも、死んだ者の方が力に満ちあふれる時があるんだ。お前も死者に負けないように命を燃やさないといけないよ」
 
 あとから気づいた。男の人は、デッカイ火を振り回していたのではなく、回る火の玉に吹っ飛ばされないように踏ん張っていたんだ。