倉開 剣人『心の声』

その夜は、雨が降っていた。
僕は毛布にくるまって家で寝ていた。
しとしと雨が降る中、外で立ち話をしている、おばさんたちの声がしていた。
「こんな雨の中、いつまで話しているだろう」
すでに夜の2時を過ぎていた。
さすがに気になって、カーテンを開けて、窓の外を見てみると誰もいない。
 「えぇ、そんなはずはない」確かに、周りを見回しても誰もいない。

 それから時々、姿なき声が聞こえるようになった。

 ある日、交差点を渡ろうとすると、「止まって」という女性の声がした。
あまりにリアルな声だったので、僕は立ち止まった。
次の瞬間、赤い車が交差点につっこんできて、僕の横にある電信柱にぶっかって止まった。
 「救急車を呼んで」頭から血をだして、その女性が叫んだ。
その声は、さっき「止まって」と、こころの中で聞いた声にそっくりだった。
 僕は急いで救急車を呼んだ。

 手当てが早く、女の人は軽症で済んだとのことだった。
僕は、一層こころの声に耳を傾けるようになった。
 
あなたも自分のこころの声を信じてみてください。